裏紙に雑文

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位相群モドキについて

位相群のようで位相群でない例について、テキストの演習問題を解いたので備忘録がわりにメモしておきたい. 参考にしたのは Donald L. Cohn の Measure Theory という教科書(1st edition). 次のリンクは 2nd editon だけれどぱっと見た感じ中身に大きな変更はなさそう.

Measure Theory - Second Edition | Donald L. Cohn | Springer

何か間違いを見つけたらコメントでご指摘ください.

位相群とは

まず位相群の定義を確認したいのだが,その前に2つ用語を定義しよう. $X, Y, Z$ を位相空間,$f \colon X \times Y \to Z$ を写像とする. $f$ が separately continuous であるとは, 任意に \( a \in X, b \in Y \) を固定した時 \[ X \to Z, x \mapsto f(x, b) \] と \[ Y \to Z, y \mapsto f(a, y) \] がそれぞれ連続であることをいう. \(f\) が jointly continuous であるとは積位相について連続であることをいう.

ちなみに separately continuous は Wikipedia の記事

位相群 - Wikipedia

では偏連続と訳されていたけれど人口に膾炙しているかは知らない.

さて,群 \(G\) が位相群であるとは \(G\) が位相空間であってその演算 \[ G \times G \to G, (x,y) \mapsto xy \] が jointly continuous であり,また逆元を取る操作 \[ G \to G, x \mapsto x^{-1} \] が連続写像であることを言った.

演算が separately continuous だが jointly continuous でない例

加法群 \( (\mathbb{R}, +)\) に次のようにして位相を定める.

\(U \subset \mathbb{R}\) が開集合であるとは \( U = \emptyset \) であるか, その補集合 \( \mathbb{R} \setminus U \) が加算であることを言う.

これが位相を定めることは補有限位相と同じようなノリで確かめることができる. この位相について \( x \mapsto -x\) は連続であり \( (x,y) \mapsto x+y \) は separately continuous である. しかし \( (x,y) \mapsto x+y \) は jointly continuous ではない.

なぜなら一点 \( \{ 0 \} \) は閉集合であるがその引き戻し \( \{ (x,-x) \mid x \in \mathbb{R} \} \) は閉集合ではないからである. 実際,これが閉集合であると仮定すると積位相の定義から \(V\times W \) (\(V, W \subset \mathbb{R}\) は加算集合)の形で書けるはずだが,これは加算集合の積なのでまた加算集合となる.これは矛盾である.

おまけ

Sorgenfrey 直線 \(\mathbb{R}\) を通常の加法によって群と思う. このとき逆元を取る操作 \( x \mapsto -x \) は連続ではない. これは Sorgenfrey 直線の位相が半開区間 \( [a,b) \) で生成されていることを考えればすぐわかる.