裏紙に雑文

日記とか,とりとめのないこと

定義を勘違いしていたという話

mtino1594です。ここ2,3週間ほど加群テンソル積の構成方法が分からなくて悩んでいました。いろいろな本を参照したりしましたが、どうにも納得がいかないところがあって立ち往生してしまっていました(こういう時こそ先生や先輩に訊きに行けばよいのですが…)。

気になっていたところ

結論から言うと、自由加群の定義を勘違いしていたというのが問題でした。 備忘録代わりに書き記しておくことにします。

以下、Aを環(単位元つき、可換環)とし、M,NA加群として話を進めていきます。 テンソルM \otimes_A Nを構成するときは直積M \times Nの元を基底として自由A-加群をつくる。

で、この自由加群の定義を勘違いしていたのでした。 自由A-加群\bigoplus_I Aの定義は
 \displaystyle
x \in \bigoplus_I A \Leftrightarrow x = (x_i) \in \prod_I A \mbox{でかつ有限個の} i \mbox{を除き} x_i \neq 0
でした(細部は異なるかもしれませんが大体の本ではこうなっていると思います)。

直積M \times Nの元(x,y)を基底として自由加群をつくるとは、 (x,y)に対応する成分が1で、その他の成分が0であるようなもの e(x,y)を基底とするようなものを考えることです。

これをどのように勘違いしたのか、直積M \times Nに成分ごとの和と作用を考えたA-加群だと思っていました。 そりゃあ納得いかんわ。
自由加群の定義をきちんと見直しておけばすぐに解決していた問題でした。 変に思い込みを持たないこと、大切ですが難しいですね。

ちなみに、無限個の場合の直積と直和が異なることは『線形代数の世界』(斎藤毅、東京大学出版)が分かりやすかったです。 少し抽象的で分かりにくいですが、テンソル積の構成そのものについても非常に参考になりました(この本を読んだらどこで詰まったか分かりました)。

まだちょっと分からないところ

代数学2 環と体とガロア理論』(雪江明彦、日本評論社)では、環Ak代数であるものであるとしていました (ただしk可換環Aは可換とは限らない)。 また、自由A-加群ではなく自由k-加群を用いてテンソル積を構成していました。 これは一体何を意図してこうしているのか、もう少し考えてみたいと思います。