裏紙に雑文

日記とか,とりとめのないこと

準同型写像の核とか

明日のセミナーの予習がひと段落したので久しぶりにブログを更新しに来ました. mtino1594です. 最近PCを起動させるのが億劫になってきてしまって良くない.

この間数学書を眺めていたときに目から鱗な出来事があったので記録しておこうと思う.

一言でいえば 「素イデアルの環準同型による逆像は素イデアルである」 という定理が何一つ分かっていなかった, ということなのだが,このままでは何も伝わらないのでもう少し書こう.

本題に入る前に,記号をきちんと定義しておきたい.

以後,環といえば積の単位元1をもつ可換環であるとし, 環準同型写像は積の単位元を保つものとする.

R, Sを環とし,\varphi \colon R \to S を環準同型写像とする. 今,\mathfrak{p} \subset S が素イデアルであるとき, \varphi^{-1}(\mathfrak{p})R の素イデアルであることを示したい.

このような問題を出されたとき,おそらく私は 「ab \in \varphi^{-1} (\mathfrak{p}) \Rightarrow a \in \varphi^{-1} (\mathfrak{p}) または b \in \varphi^{-1} (\mathfrak{p})」 を示していくと思う. これは何も間違っていないけれど,もうすこし 準同型写像の核というものに注目してみたいと思う.

準同型の核がイデアルとなることは認めることにする. I \subset Sイデアルとすれば,標準的な全射 \pi \colon S \twoheadrightarrow S/I が存在する. この全射写像\varphi を合成 \psi = \pi \circ \varphiを考えれば 単射 R/ \ker \psi \hookrightarrow S/I が得られる. 明らかに \ker \psi = \varphi^{-1}(I) であるから, \varphi^{-1}(I)Rイデアルである. また,この単射により R/ \varphi^{-1} (I)S/I の部分環とみなせる.

よって特に I = \mathfrak{p} (\mathfrak{p} は素イデアル)とすれば S/ \mathfrak{p}は整域であり,その部分環である R/ \varphi^{-1}(\mathfrak{p}) も整域となる. したがって \varphi^{-1}(\mathfrak{p}) は素イデアルである *1

この話の重要な点は

の2点だろう. 特に,準同型写像の核というものはとても大切な対象であるということがようやく分かり始めてきた. ようやくスタートラインに立てた,ということだろうか.

とある授業で先生が 「正規でない部分群は部分群とは呼びたくない*2」 と言っていたのだが,少し気持ちが分かってきたような気がする.

*1:可換代数入門』(M.F.Atiyah-I.G.MacDonald)に同様のことが書いてあったのだが,どうにも読み飛ばしてしまっていたようだ.

*2:正規部分群は適当な群準同型写像の核となる.